籠
夕暮れのフィールドは、アイツのお気に入りの一つ。
薄く見える蜃気楼。沈む太陽。
俺の好きじゃないものがアイツの好きなもの。
辺りを飛び回っていた蝶々が俺の掌に止まる。
このゲームは芸が細かい。キャラクターに蝶が乗るなんて。
こんなとこ、あいつが知ったら喜ぶだろうな。羨ましがるだろうな。
「教エナイ」
指を僅かに動かす。蝶は気づかない。
いっきに拳を固める。
グシャリ。
そんな音が耳の奥に聞こえた。
掌を開くと、蝶は杜撰な姿。
羽は折れ、足はもげていた。
ゲームなのに、妙にリアルな死骸。
気持ち悪い。
けれど、それ以上に清々しかった。
「コレデ邪魔ナモノガ消エタ?」
狂気な笑い声。
ああ、そうだ。
消えたよ、気に入らないもの。
「ハセヲさんっ」
アイツが駆け足でやってくる。
俺はさっと、手の中の死骸を地面に落とした。
「これ、ハセヲさんが欲しいって言ってたもの・・!」
両手で差し出されたものは、付加アイテムの一つ。
本当のとこは、こんなアイテムは沢山貰っていた。
だから嘘をついた。
「これで、バッチリですねw」
嬉しそうに笑う、アイツ。
そうやって、笑っていればいい。
何にも怯えずに、傷つかずに、純粋無垢に生きてればいい。
その笑顔は、俺のもの。
「イッソ、壊シテシマエバ?」
俺の狂気は今日も嘲笑う。
「ハセヲさん?」
「気分・・・悪いんですか?」
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・・・精神がイッちゃってるハセヲを書いてみたい(ぇ)と、
前々から思っていたので、いざチャレンジ。
予想以上に暗くなってしまった・・・。背景を白にした意味が
ないじゃん・・・orz
07・02・21*